健康向上に効果をもたらすのは、日常的に軽く骨格筋を動かすことであって、強い筋運動ではありません。それは、スポーツジムで行う激しいエクササイズを指しているのではなく、通勤時の歩行、駅の階段昇降、自転車での通学通勤、家事、買い物など、日常的に継続可能な有酸素運動である。
筋運動や有酸素運動というと、 ランニング、水泳、筋トレなど、特別な激しいエクササイズを思い浮かべる方が多いですが、健康維持的には日常的に身体を動かす習慣がベストです。額に汗がうっすら浮かぶ程度の、日常的な筋運動が慢性炎症の抑制と筋萎縮の防止に効果が大きい。
家事労働でも時間を区切って迅速に行えば運動量が大となり十分に PGC1-α(慢性炎症の抑制因子)を発現 させ得ます。酸素を多く取り入れながら行う有酸素運動は、乳酸が生じないので疲労が起こりにくく、長時間の筋運動が継続可能になります。それによって呼吸器や循環器 が刺激され、エネルギー源として脂肪が代謝されて身体の健康に有益な効果につながります。またミトコンドリア数も増加するので、活性酸素を増加させ ることなく、エネルギーを得ることが可能になります。
「アメリカで、一般市民を対象に慢性炎症を基盤とする疾患について大規模疫学調査が行われた結果、全身の慢性炎症レベルを高くし、さまざまな疾患を増加 させている元凶を探って行ったところ、筋運動量の少ない、身体を動かさない不活発なライフスタイルが元凶であると結論づけられた」
職場においては、会議やデスクワークによる座位姿勢が勤務時間の大半を占め、家庭においても、スマホ、TV、ゲームの日常が繰り返されている。
筋運動量が少なくなると活性酸素の害が増大し慢性炎症が拡大する。 大腸がん 、乳がん、前立腺がん、子宮がん、膵臓がん、皮膚がんは日常的に運動をしない人に多く発生すると結論づける研究も、存在します。
私たちは今、人の平均寿命が驚くほどのスピードで伸長しています。 誰もが高齢期まで生きる時代とは、誰もが慢性炎症を基盤とする疾患にかかる可能性にあることを意味しています。 60歳定年を人生の一 区切りとしていた従来の健康知識でなく、新たな知識と戦略が必要になってきています。
早め早めの戦略(運動や治療や癒し)が必要不可欠ですね。
最後に、一つ付け加えると、筋力トレーニングの場合はおもに糖質がエネルギー源です。有酸素運動は糖質・脂質・アミノ酸(タンパク質)がエネルギー源となります。 ランニング、水泳などの有酸素運動においては、上記のアミノ酸の枯渇が筋肉量の低下に影響します。長時間の有酸素運動を行い、糖質のエネルギーが枯渇すると、脂質を分解してエネルギーを生み出します。そのタイミングで、血中や筋肉内のアミノ酸もエネルギーとして利用されます。そのため、必要なエネルギーが枯渇している状態で有酸素運動を行うと、筋肉を分解してエネルギーを確保するため筋肉量の減少が起こります。また、有酸素運動を長時間行うと、AMPキナーゼという細胞内のエネルギーセンサーが働き、タンパク質の合成を阻害してしまうために筋肉量の増加が難しくなります。
適度な食事量、適度な運動がおすすめです。